スタジオジブリの名作アニメ『となりのトトロ』は、1988年の公開以来、世代を超えて多くの人々に愛され続けている作品です。かわいらしいキャラクターや、自然とのふれあいを描いたストーリーが魅力で、子どもから大人まで楽しめる内容となっています。
しかし、そんな心温まる作品に、実は「裏に怖い意味があるのではないか?」という都市伝説がネット上でささやかれることがあります。今回は、そのような都市伝説の内容とその広まりの背景、そしてスタジオジブリの公式な否定をわかりやすく解説します。
トトロは死神?ネットで話題になったウワサ

もっとも有名な都市伝説は、「トトロは死神なのではないか」という説です。この説では、トトロは死期が近づいた人にしか見えない存在で、作中でトトロに出会ったサツキとメイはすでに死んでいる、または死を目前にしていると考えられています。
特に注目されたのは、映画の終盤でサツキとメイの影が描かれていないシーンです。このことを「幽霊になったから影がないのでは?」と解釈する人が出てきました。こうした見方は、映画の一部の描写に注目して想像をふくらませたものです。
サツキとメイの「死亡説」とは?

さらに深掘りされた都市伝説では、メイが池で溺れて亡くなり、サツキもその後を追って迷子になった結果、2人とも幽霊になっているというストーリーが語られます。物語の終盤、母親が病室の窓から「あの木の上に2人がいた気がする」と言うセリフがあり、それを「母親には幽霊が見えなかった」と解釈する説もあります。
しかし、これはあくまで視聴者の想像によるものであり、公式設定とは大きく異なります。実際の映画のラストには、母と子どもたちが再会して幸せに過ごす様子が描かれています。
ネコバスはあの世行き?誤解されたシーン

トトロと一緒に登場する「ネコバス」も都市伝説の一部として取り上げられています。「ネコバスは死者をあの世へ運ぶ乗り物ではないか?」という説です。劇中で「塚森」と書かれた行き先表示が、「塚=お墓」と連想されることから、そのようなイメージが生まれたようです。
また、「ネコバスの行き先表示に『墓道』と一瞬表示される」といった話もネット上で流れましたが、実際の映画にはそのような描写は確認されていません。これもまた、誰かが面白がって作ったウワサの一つと考えられます。
狭山事件との関係性はあるのか?
さらに話が広がると、『となりのトトロ』のストーリーは、1963年に起きた「狭山事件」をモデルにしているのではないか、という説まで登場しました。狭山事件とは、埼玉県狭山市で少女が誘拐され殺害された実在の事件です。
この都市伝説では、登場人物が姉妹であること、メイが失踪する場面、狭山茶という箱が登場することなどが「事件を暗示している」と結びつけられました。しかし、宮崎駿監督はこの説を完全に否定しており、作品の内容も事件とは無関係です。
都市伝説が広まった理由とは?
では、なぜこのような都市伝説がこれほどまでに広がったのでしょうか?
2000年代に入り、インターネットが一般化したことで、誰もが自由に情報を発信できるようになりました。掲示板やブログなどで、「裏設定」や「考察」が面白がって共有され、徐々に信じる人が増えていったのです。
また、『となりのトトロ』は戦争をテーマにした『火垂るの墓』と同時上映されました。その対比から、「実はトトロにも隠された悲しいテーマがあるのでは?」と考えた人がいたのも、都市伝説を後押しした要因といえるでしょう。
スタジオジブリの公式な見解

こうした都市伝説に対し、スタジオジブリは2007年に公式にコメントを発表しました。「トトロは死神である」「サツキとメイは死んでいる」といった噂は完全に否定され、「影が描かれていないのは演出上の判断によるもの」と説明しています。
また、プロデューサーの鈴木敏夫さんも、都市伝説について「完全な作り話である」と明言しています。制作陣が明確に否定していることからも、これらの説に根拠はないと判断できます。
実際の映画描写をもう一度見てみよう

映画を改めて見てみると、サツキとメイにはちゃんと影が描かれている場面が多く存在します。メイもサンダルを履いたまま見つかり、元気な様子で描かれています。ラストでは母親との再会や、家族の団らんがしっかりと描かれており、作品全体からは明るくあたたかいメッセージが伝わってきます。
まとめ:ウワサに惑わされず、作品の本質を味わおう
『となりのトトロ』は、自然と人とのふれあいや、家族の愛情を描いた、心が温かくなるアニメーション映画です。ネットで広まった都市伝説は、あくまでウワサや想像の域を出ないものです。
映画を観るときは、事実とは異なる話に惑わされることなく、自分自身の感性でその魅力を受け止めてください。スタジオジブリが届けたい「優しさ」や「安心感」のある世界を、素直な気持ちで楽しむことこそが、本当の鑑賞の仕方ではないでしょうか。
これから初めて『となりのトトロ』を観る人も、何度も観ている人も、あらためてその世界観をじっくり味わってみてくださいね。
おすすめの楽しみ方と次に観たいジブリ作品



『となりのトトロ』の魅力は、一度観ただけでは気づかない細かな演出や、背景にある昭和の風景の丁寧な描写にもあります。2回目、3回目と見るたびに、新たな発見があるはずです。
また、家族や友人と一緒に観ることで、それぞれの視点からの感想をシェアするのもおすすめです。小さな子どもと観れば、子どもの視点での感性にも気づかされるかもしれません。
もし『となりのトトロ』を観てジブリの世界観に興味を持った方は、次は『千と千尋の神隠し』や『風の谷のナウシカ』、『思い出のマーニー』なども観てみると、また違った魅力を感じられるでしょう。
都市伝説に左右されず、自分の感性を大切に
インターネットではさまざまな“裏話”や“考察”が話題になりますが、作品をどう受け取るかは最終的にあなた自身の感性です。物語の中に流れる優しさや、自然との共生、家族のつながりといったメッセージに目を向ければ、きっと『となりのトトロ』がもっと好きになるはずです。


ふかふかのネコバス、気持ちよさそうですね 乗ってみたくなりますね(^^)